交通機関に乗車すると、よく聞くアナウンス。
「車内では、つり革・手すりにおつかまりください」
この「つり革」、現在はナイロンやキャンバス生地ですが、革という文字通り、昔はリアルに「革」だったんですね! というお話です。
木造電車と、革の「つり革」
前回に引き続き、東武鉄道博物館の話題です。
お隣に『5号蒸気機関車』があるのですが、SLではなく今回は電車です。
大正時代から浅草~西新井間を走行していた、木造の電車『デハ1形5号電車』
この中をのぞいて、私はハッとしました。
見てください。
つり革に、本物の「革」が使用されています。
いかにも丈夫そうな革で、しっかりと作られています。
木枠と革、自然素材がマッチした、贅沢な車両でございます。
そして、手をつかまる輪っかが、現在の電車のつり革に比べて低い位置に設置されていることにも注目して欲しいと思います。
この電車の製造当時、1924(大正13)年の日本人(17歳)の平均身長は男性160センチ、女性は150センチだったようです。
2015年での男性平均は170センチ、女性は158センチと、約10センチも違いがあります。
この電車の製造当時、1924(大正13)年の日本人男性17歳の平均身長は男性160センチだったようです。
2015年での男性平均は170センチと、約10センチも日本男性の身長は伸びています。
また、日本女性(17歳)の平均身長は、150センチから158センチと、約8センチの違いになっています。
つり革の位置も、時代と共に変化してきたことがうかがえます。
(参照:学校保健統計調査 年次統計)
ご覧ください。車内は大正ロマンを思わせる、レトロな空間です。
木製の窓枠、ベルベット調のふかふか椅子。
藍鉄色(あいてついろ)でしょうか。
緑みを含んだ濃い青色と、木の茶色のコントラストが綺麗です。
照明も上品でオシャレです。
当時は、お気に入りのお着物やお洋服を着て、電車でお出かけするのが相当な楽しみだったのでしょうね…。
今の通勤電車でなく、この電車なら、ぐんと気分も上がりそうです。
走行区間を示すプレートも、当時の雰囲気を漂わせています。
「浅草」の文字に旧字が使われ、横文字なのに左からでなく、右から読ませるあたりに時代を感じます。
くさかんむりが「+ +」に、「浅」も旧字の「淺」 と表示されています。
ちなみに現在、日本人の子どもの名前(出生届)に、旧字の「淺」は使えないそうですよ。
キャブオーバーバスのつり革も、リアルに革でした
電車の次は、バスを見てみましょう。
こちらは、レトロなフォルムとカラーが可愛い、『キャブオーバーバス』です。
車内を見ると、この通り!
こちらのバスのつり革も、リアルに革です!
昭和に製造された物なので、窓枠や手すりは金属ですが、床は木製です。
レトロなものをみると、懐かしく感じたり、なんとなく落ち着くのは、その色使いに理由があると思います。
例えば、こちらの運転席。
裏柳(うらやなぎ)、白みがかった淡い黄緑色が使われています。
座席の濃い紺色、側面の金属部分のクリーム色、そして木の床の茶色を調和させています。
自然素材をうまく融合させる、見事なカラーリングだなぁと思います。
映画『となりのトトロ』で、お父さんが利用していた、お鼻が突き出たタイプが『ボンネットバス』
お鼻をひっこめて、運転席横にエンジンがあるタイプが、 こちらの『キャブオーバーバス』のようです。
ではまた、次回。
レトロな世界でお会いしましょう!
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