AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争

AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争 レトロなものたち

写真集『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』

この写真たちは、なんてこんなにも、心に迫ってくるの…。

写真集『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』を見た、私の率直な感想です。

現在30代である私が、戦前・戦中・戦後の生活を、自分の日常と結びつけにくい障壁のひとつが、当時の映像や写真が白黒であること。そう感じさせる、一冊の写真集と出会いました。

当然に、私たちがこの目で見る世界は、鮮やかな色彩に溢れています。

カメラが、当時の瞬間を白黒で切り取ろうとも、時代がどれだけ移り変わろうと、それは変わらないはずなのに、当時を知る手がかりとなる写真や映像は、白と黒の濃淡でしか存在しません。

白と黒だけの無機質な世界など、どこにもありはしないのに。

リアルなカラー表現に慣れた私にとって、それは、一種の違和感をもって、今現在の自分と「戦前・戦争」を切り離す見えない壁となっていたことに、改めて気づかされました。

この写真集には、戦前から戦後のカラー化された約350枚もの写真が年代ごとに収録されています。

戦争をテーマにした写真集としては異例の、発行部数6万部を超えるベストセラーとなっているそうです(2021年8月時点)

「記憶の解凍」プロジェクト

これまでも、カラー化された写真や映像は見たことがありました。正直なところ、なんだか微妙で、私はそれほど心惹かれなかったんですよね…。

そもそも、戦争映像は白黒であっても、残虐すぎて見ていられないことも多かったです。

それらと、この写真集の違いは、技術の進歩も一役買っているとは思いますが、著者である庭田杏珠さん・渡邉英徳さんの想いの強さに要因があったようです。

この写真集は、写真をカラー化するだけではなく、戦争体験者との対話や、そこから生まれるコミュニケーションまでを含めて「記憶の解凍」プロジェクトと名付けられているそうです。

写真一枚、その中の着物の色、細部にまで聞き取りを行い、修正を加えながら、より当時の色彩に近づけようと、気の遠くなるような地道な努力を重ねてこられたそうです。だからこそ生み出される、今と昔の交差 「記憶の解凍」に、大きな意義を感じました。

戦前・戦中の生活が現実味を帯びる、パラダイムシフト

広島市によると、原爆投下で約14万人もの方々が亡くなられたそうです。広島の原爆だけで14万。その膨大な数字からは、あまりに自分とかけ離れた何かに思えてしまいます。

そんな私でも、色を取り戻した 戦前の写真を見ていると、今と変わらない日々の幸せ、例えば家族そろってスイカを食べる光景や、笑い声まで聞こえてきそうなお花見の一場面、それら何気ない日常が、急に現実味を帯びるという、パラダイムシフトが起こりました。

そして、『1941 WAR BEGINS』の次のページを開き、私は泣きそうになりました。真珠湾攻撃に向かう戦闘員たちが、感情を押し殺した表情で、私を見ていたからです。

赤い炎を湛えて燃え上がる真珠湾の駆逐艦。片や、もみ殻の入った袋を銃剣で突き刺す京都のあどけない少年。戦禍が激しさを増していく中、ページをめくるのが苦しくなります。原爆投下後の広島や、空襲で焼け野原となった東京には、カラー化されていようとも、街に色は残されていませんでした。

片渕須直さん(映画『この世界の片隅に』監督)の帯コメントには、こうあります。

『すずさんの時代にたどり着きたいと思っていたら、ここにもタイムマシンを作ろうとする人がいました』

そう、この人たちは当時を生きていた。色も、想いも、笑顔も詰まった生活があった。

今私が生かされているように、確かにこの方々も生ていて、そのかけがえのない生活が、瞬時に、不条理に、壊滅的に奪われた。それこそが先の戦争で、原爆なんだよと、訴えかけてくるのです。

「自分たちが残した時代で、あなたはどう生きていくの?」

写真に映る、お一人お一人に、そう問われているような気がしました。

1/350の懐かしい! を探してみませんか?

現在、終戦から76年もの月日が流れています。

80代、90代の方でも、当時幼かった方が多く、思い出すための糸口がなければ、遠い記憶をたぐりよせることは難しいように思います。

戦前・戦後を知る方であれば、350枚のうち「懐かしい」と感じる1枚があるのではないでしょうか。

私は、次に高齢の方に会いに行く際、この本を持っていこうと思います。何か、これまでに聞いたことのないお話が聞けそうな気がします。

こちらの本、近所の図書館にもありました。ページ数は多いですが小ぶりです。もし、気になった方は手に取ってみてください。

これまで自分の中にあった、時代を切り離していた透明な障壁がスッと消え去り、当時の生活の息づかいが聞こえてくる瞬間を、あなたも感じられるのではないでしょうか。

ではまた、次回。

レトロな世界でお会いしましょう!

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